クリスマスイブってことでそれ関連のネタです。
日付が変わった直後に投下しようとしたものの、もろ失敗して大いに焦った記憶がありますw
しかし、案の定プライベートの予定は皆無だったんだよな、この時期。 orz
クリスマス・イブに降るのが雪だったならば、ロマンティックな気分が少々の寒さも我慢させてくれるかも知れん。ただ、今現在俺の身体を濡らしているのは冷たい雨だ。折り畳み傘じゃなくて、ちゃんとしたのを持ってきた方がよかった、と今更後悔しても後の祭りである。
待ち合わせの時間には余裕で間に合いそうなんだが、例によってハルヒの奴はもう到着しているはずだ。まあ、本日はそもそも俺はあいつの財布代わりみたいなものなので、奢り云々はもう既定事項みたいなものなのだった。
でも、会ったばかりでいつものように怒鳴られるのはマズいな。今日という日は、ハルヒも俺も気分よく過ごしたいと思うだろうからな。
で、喫茶店で俺を待っていたのは、ポニーテール姿のハルヒだった。そういえば、少しずつ髪を伸ばしているみたいだったな。毎日のように会っているとなかなか気付かないもんだが。……いかん、何か顔面が緩んでしまうな。
「キョン、遅いじゃないの。今日ぐらいはちゃんと早く来てくれると思ってたのに」
だが、何故だかご機嫌斜めな様子だ。約束した時間の十五分前というのは、俺からすれば上出来だといってもいいだろうに。
「どうしたんだ、何かあったのか?」
ハルヒはしばらく頬を膨らせて黙っていたが、やがて、ブツブツと恨めしそうに、ここに来るまでにあったことを話し始めた。
「実は、あたし昨日鶴屋さんと一緒に、ちょっと遠出してて、ついさっき帰ってきたばっかりだったのよ。時間がギリギリになることもあらかじめ解ってたから、今日のキョンとの約束にそのまま直行できるように用意はしてたんだけどね」
そういって、頭に手をやり顔をしかめるハルヒ。鶴屋さんとの件は、なんだかんだで俺も知っていた。何をしに行ったかまでは解らんけどな。
「向こうで、帰り際のタクシーからあたしが降りようとしたとき、運ちゃんの奴がなに血迷ったのかドアを閉めやがったの。頭を思いっきり直撃よ。たんこぶ出来ちゃったじゃない」
それは災難だったな。ご愁傷様で御座います、っと。
俺の軽口にハルヒは応じることはなく、がっくりと肩を落として、しょんぼりとした様子でこう続けた。
「たんこぶだけならまだいいんだけど、――壊れちゃったのよ、カチューシャ。前にキョンからプレゼントして貰ったお気に入りの奴だったのに……」
それで合点がいった。突然のポニーテールも、既に憂鬱度マックスだったのも、そのことが原因だったとは。
俺が注文したコーヒー一杯を飲み終えるまでに、ハルヒはケーキ二個とパフェまで平らげていた。何かヤケ食いしてるみたいではあるのだが、まあ、実際そうなんだろうな。
喫茶店を出る頃には雨は止んでいた。しかし、誰の嫌がらせなのかは知らんが、北風が強くなってきた。いい加減、勘弁して欲しいのだが。
ウィンドウ・ショッピングの間も、ハルヒのしょげた感じは回復してくれなかった。
本調子のハルヒなら、既に俺の軍資金に多大なダメージを与えているぐらい、店を梯子したはずなのだが、本日はいまだに喫茶店ではらって以来、消費金額ゼロである。
溜息をつくハルヒを見ているうちに、普段から散々『鈍キョン』呼ばわりされているおれでも流石に気が付いた。ハルヒはカチューシャを探しているようなのだ。
しかし、あいつのトレードマークとも言うべきリボン付きの黄色いカチューシャは、どこに行ってもとうとう見つけることが出来なかった。ますます落ち込む様子のハルヒ。
吹きすさぶ風がよく似合うことなんて全然無い俺達は、寒さによって心身ともにダメージを受けていたせいか、いつの間にか会話も途切れがちになっていた。
よりにもよって今日という日にこんな状況だとはな。ハルヒの瞳にいつものパワーが宿ってないと、俺の気分も海底二万里ってぐらいに沈んでしまうのだ。
しかし、本当に冷える。俺の服装は、センス云々はまあ置いておいて、冷たい風に対抗するにはまだマシな方だったかも知れん。だが、ハルヒの奴、お洒落してんのか防寒的には貧弱だとしか思えない、見てるこっちの方まで寒くなってしまいそうな格好だ。
冷え切った両手に吐きかけるハルヒの息は白く、寒風に晒されて頬も耳も赤くなってしまっているのが痛々しい。
と、そのとき、俺に天啓がひらめいた。
「なあ、ハルヒ。俺もちょっと行ってみたいところがあるんだけど、いいか?」
「そう。……別にいいわよ」
元気なく答えるハルヒを引っ張りつつ、俺はこの界隈では大き目のスポーツ用品店を目指した。
この時期、店内はウィンター・スポーツ色で染まっている。すっかりくたびれた様子のハルヒを、店内の空いているベンチに座らせた俺は、目的のものを求めて、スキー・ウェアなどのコーナー辺りを物色し始めた。
果たして、それはあっさり見つかった。
イヤー・マッフル。要するに耳あてのことだ。
種類もカラー・バリエーションも豊富に在庫がある。モコモコのフワフワが気持ちよさそうな感触のそれは、おあつらえ向きなことにリボン付きではないか。
俺は黄色いブツを手にすると、速攻でレジに向かった。
「遅いじゃない、なにやって……、え? キョン、それって――」
「耳が冷たそうだったからな。ほら、俺からの『プレゼント』だ」
わざと『プレゼント』のところを意味ありげに言うのがポイントだ。まあ、それで「まさか、これだけで済ませるつもりじゃないでしょうね」とか、ツッコミ入れてくるに違いない。ずっと沈黙を続けるよりは、そっちの方がよっぽどマシだ。
とか、勝手に考えていた俺の目の前で、何とあのハルヒの奴が、両手で口元を覆って、今にも泣き出しそうな様子ではないか。
「……バカ」
うーんと、その、何かまずかったか?
「――あんたって、いっつも鈍感野郎なくせに、どうしてこう突然に、あたしの気持ちをぐらつかせるような真似するのよ。それも、たまーにだから、心の準備もなにもできてないのに、あたし……」
感極まった様子のハルヒは、そのまま俺の方にしがみついてきた。って、あの、周りの人からものすごく注目されてますけど。どうすればいいんでしょうか。誰か、今すぐ俺に教えてくれ。
公開罰ゲームから逃げ出すように店を飛び出すと、この時間、外はもうすっかり暗くなっていた。
ハルヒと並んで俺は歩く。北風もきまぐれなことにほとんど消えていた。やはり会話はなかったが、もう気まずさは全然残っていなかった。
やがて、眩いばかりのイルミネーションで彩られたエリアにたどり着く。ふと周りを見ると、カップルばかりであったのは俺の気のせいではあるまい。
「ちょっと、キョン。あんまりキョロキョロしないの。みっともないじゃないの」
そう言うとハルヒは、自分の荷物からなにやら黄色い物を取り出した。
手編みのマフラーだった。
「あたしからのプレゼントよ。キョンにはもったいないぐらいのシロモノだけど、でもまあ、他に渡す人がいるわけでもないし、せっかく作ったのを無駄にしなくてもいいかなって思ったから、あんたにあげるわ」
色々引っかかりのある言い方ではあるものの、正直俺は嬉しかった。暇な時間を捻出しては、必死で編み物をしているハルヒの姿が俺の脳内に投影される。って、何だかこのマフラー、妙に長くないか、おい。
「そんなの決まってるじゃない。あたしも使うもの」
と、言うが早いか、ハルヒの奴は俺をひっ捕まえると、いわゆるカップル巻き状態を完成させた。いきなりだな。俺にも心の準備ってものが……、
「さっきのお返しよ。観念しなさい」
と言いつつも、ハルヒの奴も顔が真っ赤ではないか。こいつ、自分自身もダメージ受けてるのに気が付いているんだろうかね?
でもまあ、機嫌直ったみたいで、本当に一安心だな、とか考えてる俺の顔が妙にニヤケているみたいな気がするのは、多分、ハルヒのイヤー・マッフルのフワフワのモコモコが当たってくすぐったいからだ、ということにでもしておいてくれ。
ということで、スレでも指摘がありましたが、タクシー云々の件は『中の人』ネタですw
何気に美味しいネタが落ちてることがあったりするので侮れませんw
そういう意味で何気にチェックしてます。
しかし、初投下で既に付き合ってるらしきハルキョンを書いてたのか>自分
我ながら何かスゲー意外な気がするw
フワフワのモコモコ~は自分でも好きな表現です。
自分の場合あまり直接的な表現をしないっぽいので
ちょっと考えると「何だこいつら? チキショウ!」ってな状況は結構あるはずなんですが
その辺どうなんでしょう? 読み飛ばされる気もするがそれも文章的な実力ってことか。 orz
