年末になんかスレが険悪な雰囲気になってた時に二連投した分の片割れです。
もう片方のミスのツッコミとか年齢がバレるぞネタとかで
こっち側の反応がほぼ無かったような気がするなあw
格差社会とか、勝ち組負け組だとかいわれるようになって久しいが、そんなことは最近になって生じた事象ではなく、人間社会において搾取する方とされる側の関係というモノが存在することは、歴史を紐解いてみるまでもない自明なことだ。
ただ、支配階級層にいる人物が、被支配階級層に理不尽な要求を突きつけるという例を目の当たりにするに、なんともいえない憐憫の情で満たされてしまうのは、俺も被支配者層であるが故のシンパシィというものなんだろうかね。
というわけで、午後の体育授業でのくそ面白くもない持久走にヒット・ポイントを真っ赤になる位まで削り取られた俺を待っていたのは、
「ねえ、キョン。放課後にちょっと付き合いなさい。うん、大したことじゃないわ。ただの肉体労働だから。安心して、雑用には雑用にふさわしい職務を、団長のあたし自らが与えてあげるんだからね。感謝しなさいよ」
と、ご無体なことを告げながら瞳をキラキラと輝かせているハルヒその人であった。
やれやれ、勘弁して欲しいんだがな。
肉体的にも精神的にも疲労困憊状態の俺の足は、無意識のうちに文芸部室にしてSOS団のアジトに向かっていた。鳩の帰巣本能だとか、酔っ払いが意識もないのに自宅に帰り着くみたいだ、とかいわれても、今の俺には何かコメントする気力さえ残っていない。
ハルヒの奴、以前は電気ストーブのお使い命令だったが、今度はいったい何をさせるつもりなのやら。
せめて古泉の奴を巻き込んでやりたいものだ。ハルヒの目前でそのようなことを言っても、副団長がどうのとかいう理由で却下されるのがオチだ。
あいつは幸い遅れてくるみたいだし、先に根回ししとくか。古泉が自発的に俺に協力するというのを流石にハルヒも止めないだろうし。
もっとも古泉のことだからのらりくらりと受け流されて有耶無耶にされるような気もするが。まあ、そうならそうで構わんさ。
せめて、朝比奈さんのお茶の一杯ぐらいにはありついてからにしたいものだ。
部室に着くと、中から聞こえてきたのは宇宙人未来人超能力者の話し声であった。いや実際は、二人分の声だったのだが、それでも俺が三人いる、と判断した理由は、今更皆に説明するまでもないことだろう。
「ふえ、わかんないですよう。……あ、キョンくん、いらっしゃい。――あの、古泉くん、キョンくんにも訊いてみましょうか」
と、相変わらずのプリティでキュアキュアなメイド服朝比奈さんは、ニヤケスマイル野郎になにやら促す。
「そうですね、彼のことですから、そういう方面に造詣があっても何の不思議もありませんね」
一体何の話だ?
「ああ、すみません。ちょっとした常識クイズなんですが、あなたは『H/K』という言葉の意味をご存知でしょうか? 何でも、最近の女子高生言葉ということなんですけど」
何だろう、『KY』とか、その手のシロモノなんだろうか? しかし古泉め、俺がどういう方面に造詣が深いと思ってるんだ?第一女子高生言葉なら、目の前に現役が二名も存在してるだろ。
「そんな、わたし、全然わかんないんですよぅ。――長門さんは知ってるみたいですけど、教えてくれませんし」
「……ネタバレ回避」
開いた本から視線を外すことなく応対する長門。こいつがそういう方面に詳しかったとは、少々意外な気もする。それとも、情報統合思念体は、宇宙開闢以来からの全ての物質中の原子の総数から、最新の女子高生言葉まで把握しているとでもいうのだろうか?
「ふみー。いじわるしないでくださーい」
「…………」
「まあまあ、長門さんも悪気があってのことでは無いでしょう」
しかし、なんだな、この三人がハルヒ以外のことで歓談しているというのは、それはそれで平和なことだよな、とか考えて、俺もちょっとの間だけ心和ませたりとかしていたのだった。
おっと、そんな場合じゃなかったな。さっさと古泉の奴を懐柔して、俺の負担分を減らす算段を講じないと。
「あー、話は変わるけどな……」
と、俺が口を開いた瞬間、予想外の人物が割り込んだ。
「正解。パチパチパチ……」
と、本から手を離し、小さく拍手する長門の透明な瞳は、俺の方を捕らえている。
「ご名答です。あなたも流石ですね。僕も他の方から教えていただくまでは、何のことかサッパリ解りませんでしたから」
と、ニッコリ笑う古泉。おい、何のことだか話が見えんのだが。
「え、じゃあ、『H/K』っていうのは『話は変わりますけど』っていう意味だったんですか?聞いたことなかったです。へえ」
と、一人可愛らしく納得する朝比奈さんを見て、ようやく俺も何のことか理解した。俺は解答したつもりなかったんだけどな。
「まあ、聞いたことがない、というのはあるかもしれません。どうやら、メールの文章が長くならないように生み出された略語のようですので」
「わたし、HとかKとかあるもんだから、てっきり、涼宮さんとキョンくんに関係があるんじゃないか、って思ってました」
って、どさくさになんてこと言ってるんですか、朝比奈さん。
「なるほど、それは興味深い意見ですね。では、朝比奈さんの考えでいくと、あなたは『H/K』を、どのように解釈しますか?」
うーん、そうだな。『/』といえば割り算とか分数ってことだから、『ハルヒ』割る『俺』とか、『俺』分の『ハルヒ』というところか。何か後者は俺の上にハルヒが乗っかってるみたいで潰されそうだな。って、何をニヤニヤしてやがる古泉。
と、そこにバーンとドアが開く音。ハルヒ様のご到着だ。どうやら古泉を説得するのは間に合わんかったみたいだ。
「ほらキョン、さっさと行くわよ。なにくだらない話してたの?」
割り算とか、俺が分母でお前が分子だとか、そういったことなんだが。まあくだらない話ではあるか。
「なによそれ? キョンが分母? あんた中身が無いもの、そんなのゼロで割り算することになるから無意味よ」
何だろう、さりげなく酷いことをいわれた気がするぞ。
「なら、お前が分母の方がいいのか?」
「それも嫌。あんたよりあたしの方が下って位置関係が気に入らないのよね。そもそも何で割り算なわけよ?あたしはやっぱ、掛け算の方がいいわ」
「掛け算っていうと、じゃあ『ハルヒ×俺』ってことなのか?」
って、ゼロに何をかけてもやっぱりゼロなんじゃないのか? などと俺が考えていると、
「わあ。涼宮さんと、キョンくんって、やっぱり……」
と、頬を染めて両手で口元を隠す朝比奈さん。なんだろう、この反応は。
「おやおや。もはや、僕からはお二方へは何の言葉も必要なさそうですね。どうかお幸せに」
だから、なんなんだ古泉。そのなんとも言いがたい視線は止めてくれ。
なあ、長門。俺、何かまずいこと言ったのか?
「……『×』はカップリング記号。即ち二人は――」
と長門がそこまで話すと同時に、ハルヒによって俺のネクタイが引っ掴まれた。
「こら、キョン。もう、いつまでも油売ってないで早く来なさいったら」
いや、あの、ハルヒさん? そんなに引っ張ったら首が絞まって窒息しますが。マジ、死ぬってば。
しかしながら、顔に血が上った状態で抗議する俺の言葉を無視したまま、ハルヒの奴は何故か俺よりもっと顔を真っ赤にして、ネクタイを離すことなく俺を引きずっていくのであった。
なあ頼む、誰でもいいから俺を助けてくれないか?
うん。
今更読み返してみたけど、これじゃ反応ないのも解るわ。 orz
蹴りたい背中じゃなくて吊りたい首ですよ。
最初の頃は冒頭の部分で無理してるのが痛々しいんですよね。
しばらくはこんなのが続くのでご容赦の程を。
