というわけで、二連投のもう片割れです。
スレで公開/まとめサイトに収録のものとはかなり別バージョンになってますが
最早そんなことはどうでもいいんです!(><;)
誰だって寒い冬の朝には、暖かい布団の中でゆっくりとささやかな幸せを満喫していたいと思うことだろう。それが、休日の朝ならば尚のことだ。
かくいう俺も考えていることは基本的に同じだが、状況がそれを許さないことの方が多いのは、一体全体どういったことなのだろかね。見えざる神の不公平加減に、つい愚痴の一つもこぼれようというものだ。
しかも、本日の恒例市内探索は、俺とハルヒ以外の三人はまるで示し合わせたかのように欠席、ときたもんだ。
まあ、全員参加の場合だと、どう足掻いたところで俺が最後になるのはもはや既定事項なんだろうしな。
かといって、俺とハルヒだけのときにあいつが遅れて来ようが喫茶店代を払う意思が皆無であることも確実なわけであり、つまるところ、俺の財布が痩せ細るであろうことはもう避けようの無いことなのだ。まあ、せめてワリカンぐらいにはなって欲しいところではあるな。
そういえばハルヒの奴の手持ちが無いからとかで俺が肩代わりした分が何回かあったと思うのだが、返してもらった記憶など全く無いぞ。と、その事実にに気が付いて愕然とする俺なのだった。
と、モチベーションを下降させつつも、そろそろオイルを注すべきなんだろう、チェーンから異音を発する自転車を駆って駅前に向かう俺のポケットの中で、バイブレーションと共に着信メロディが鳴り響く。
ハルヒの奴からだった。
『あ、キョン。着いたら先に喫茶店に入って待っててちょうだい。――ん、勘違いしないでよ。あたしはもう集合場所にとっくに着いてるんだから。いい、今日もあんたの奢りだからね』
目的地寸前で遅刻決定。ってまだ集合時間の二十分前なんだけどな。スマン、ちょっとイジけてもいいか、俺。
自転車を適当な場所に停め、チェーンロックを掛ける。今日は撤去されたりしないだろうな、とか考えながら、いつもの喫茶店に直に向かおうとする俺の目の前に、見慣れた後姿が。ハルヒだ。
って、隣にいるその男は一体どこのどいつだ?
背が高い。外人か? すぐには名前が浮かばないが、有名俳優に似た、それもハリウッド映画とかで主人公とかやっててもおかしくなさそうな位の奴か、そんな感じの整った顔立ちときたもんだ。
キラリと光る眼鏡は知性を感じさせ、朗々としたテノール声は周囲を通りかかる女性達も思わず振り返るほどだった。
そんな異国製完璧超人と肩を並べて歩きながら、ハルヒの奴は流暢な英語で楽しそうに会話を成立させている様子だ。
時折ジョークなども交えているのか、笑い声が聞こえたり、あまつさえ、なにやら歌い出す始末だ。おいおい、なに肩を組んだりじゃれあったりしてるんだよ、お前ら。
いつの間にか、俺も二人の後を追って歩き出していた。ハルヒが、普段見せたことの無いような表情でその男に微笑む、その度に俺は、心の中でわけの解らん靄のようなものが渦巻くのを感じていた。
なんなんだ、この名状しがたい不快な気分は? まさか――
ハルヒに馴れ馴れしくしているあの男に嫉妬してるとでもいうのか、この俺が?
時間にして十分かそこら位だったのだろうが、そのときの俺にはそれが数時間もの長さに感じられていた。
やがて、怪人ハリウッド男(命名、俺)はハルヒのことをハグすると、二、三言葉を交わして立ち去っていった。手を振ってそれを見送るハルヒ。
しばらく立ち尽くしていた俺は、程なく振り返ったハルヒと、思い切り目が合ってしまった。
「あら、キョン。何であんたこんなとこにいるのよ? 先に喫茶店で待っててっていったじゃ――」
「スマン、……俺」
バツが悪くなって、俺は踵を返すとそのままハルヒの元から逃げ出した。
つらく、なって走り出すYO! 体からほとばしるガス! とか意味不明なことを頭の中にぐるぐる巡らせながら、ひたすら駆け続ける俺なのであった。
が、一つ誤算があった。
みなさんもご存知のことだとは思うが、ハルヒの奴、滅法足は速いのだ。
当初は何が何やら解らずに呆然としていたハルヒだったが、我に返ると同時に、猛然とダッシュで俺との距離を縮める。
「こらー、キョン! 何で逃げんのよー? ちょっと、待ちなさいってばー」
俺に追いつくが早いか、足払いを掛けるハルヒ。もんどりうって顔から地面に激突する俺。――痛い。何をしやがる。
息を切らせながら、ハルヒが俺を引っ張り起こす。
「ああ、もう。なにやってんのよ? 鼻擦り剥いちゃってるじゃないの。……ホラ!」
ポーチからごそごそとハンカチと絆創膏を取り出すと、ハルヒは妙に手際よく、俺の傷の応急処置を済ませた。
俺は、自分の情けなさ加減に大いに呆れながらも、言葉を発することも出来ず、ただハルヒにされるがままになっていた。
結局、ハルヒと俺は、喫茶店には戻ることなく、かといって目的地を定めることもないまま、黙って歩き続けた。
河川敷の桜並木もすっかり葉を落としてしまっており、見るからに寒さを感じる。
沈黙に耐えかねたのだろうか、ハルヒが口を開いたのは、俺がキュートな未来人から衝撃の告白を聞いたベンチの辺りでのことだった。
「あんた、ひょっとしてさっき、駅前からずっと付いて来てたの?」
「……ああ」
「なによもう、そうなら一言声を掛けてくれればよかったのに」
どう考えても、そんな雰囲気じゃなかったんだがな。
「へ? 何のことよ。――いいわ、あんたがなに勘違いしてるか知らないけど、最初から全部話してあげるから」
と、例のベンチに腰を下ろすハルヒ。なにやら小声で、もしかしてあたしのこと心配して、とか、キョンに限ってそれは、とかブツブツ呟いていたが、パッと顔を上げたかと思うと
「あ、そーだ。さっきから喉渇いてしょうがないのよね。キョン、なにか飲むもの買って来なさい。あたしはホットのはちみつレモンがいいわね」
と、しれっとのたまうハルヒ様である。まあ、俺も特に反論するでもなく、その言葉に従って自販機の方へと向かった。
俺が買ってきたジュースをものの数秒で飲み干したハルヒは、一呼吸おくと、先程のことを語り始めた。
「いつもの場所であんたが来るのを待ってたら、さっきの男の人が声を掛けてきたの。最初はナンパかなにかかと思ったんだけど、よくよく訊いてみたら、数年前にこの辺で逢った女の人を捜してるみたいだったのよね」
なにやら遠くを見つめながら、ハルヒは淡々と話を続ける。
「そうそう、自己紹介してもらったけど、彼って自分のことを『ジョン・スミス』って名乗ったわ」
それを聞いて俺は飲んでいたコーヒーを思い切り噴きそうになった。
「どうしたの、キョン?」
「な、なんでもないって。ていうか、それっていわゆる偽名っぽくないか?」
ハルヒはほんの僅かだが複雑そうな感じで笑った。
「あんたもそう思うでしょ。あたしも。だから訊いてみたんだけど、ジョン曰く『日本人でも山田太郎とか田中一郎という人がいないわけじゃないだろう』だって。どうもジョンは、かなりの日本通、それもアニメオタクとかみたいだったわね」
それから、ハルヒは『ジョン・スミス』氏が、以下に運命的な出会いをしたか、自分がどれほどその女性のことを思っているか、ということを、延々と惚気られた、と俺に解説したのだった。
「どんなことをしても必ず見つけ出す。再会できたら二度と離さないんだ、って、あたしのことまで抱きしめてくるからびっくりしちゃったわ」
ハルヒは、いつも俺が「やれやれ」とか言ってるときのような真似をしてみせた。
「でも、何だかジョンって、あたしに似てるかも、とか思ったの。それをジョンに言ったら、『ハルヒ、キミも頑張れよ』だって。きっとジョンもあたしと同じこと感じてたのかもしれないわね」
そこまで話して、ハルヒは急に深刻そうな表情になった。いつだったかの踏切近くで見せた、あの顔に。
「あたしも――。実はね、ずっと捜してる人がいるの。この市内探索だって、その一環なわけ。まあ、確率的には低いかもしれないけど、でも何もしないままだとそれはゼロのままだから……」
七夕の憂鬱再びといったところだな、と何故だか俺は直感していた。それに呼応するようにハルヒは深い溜息を一つ吐いた。
「もっとも、その人に逢ったのって、あたしがまだ中学の頃の話なんだけどね」
真夏の夜の夢のような東中の校庭での一件を、多分懐かしそうに、しかしどことなく寂しそうに思い浮かべているらしきハルヒ。
そのハルヒに対して掛ける言葉を、俺は持ち合わせてなかったのだが、幸いにして、ハルヒの方でも、俺から何かを言われることは望んでもいない様子だった。
「もう顔もよく覚えていないけど、でも、またいつかきっと巡り逢う、あたしがそう信じてさえいれば、それは必ずかなうんだって。……あ、ゴメンね、キョン。ずっと一人で考え込んじゃって。退屈だったでしょ」
さて、どうしたものだろうかね? 実はそいつが今お前の目の前にいるんだってことを今ここで正直に話すわけにも行かないし。本当に困ったもんだ、全くな。
その後のことは特に語る程でもない。
昼食時の俺の奢りのファミレスで、ハルヒはいつもの健啖ぶりを顕にしたかと思うと、エネルギー充填二百パーセントといった状態で元気溌剌、さっきのしんみり感をすっかり消失させると、午後の探索と称した買い物に俺を引きずりまわした。
「ほらほら、ボーっとしてないで。次行くわよ、キョン!」
だから大声を出すな。周りの人が何事かと思ってこっちをみてるじゃないか。しかもみんな一様に生暖かい目で見てるような気がするのが、俺の思い過ごしだといいんだがな。
あと、腕組んだままそんなに暴走するんじゃありません。また俺が転んだりしたらお前まで道連れだぞ。おい、危ないって、こら。
お粗末さまでした。
お蔵入りも考えたんですけど、やっぱり黒歴史も残してこそってことで。
例のツールがバグってて、後半部分を中々書き込めなかったんですよね。
しかも投下バージョンはキョンが『ハルヒに嫉妬』なんて豪快なミスを晒してたしw
それなんて『やらないか? ウホッ』
細かいところではハルヒがキョンに七夕のことを話してしまうのはマズかろう
てな指摘もあったりして自分でも成程って思ったので改変してみたんですがどうだろう?
余計微妙な感じになったかもぉ
それにしても、みんな『あ~る』ネタ大好きだなwwww
いや、自分も大好きですけど。
