随分とご無沙汰になりましたすみません。
先月末にはちゃんと届いてたんですよ、朝倉の figma はw
でも、何か全然SS書けなくて難儀しました。
気付いたらこんなに日付が過ぎてる始末。 orz
拍手コメント返信です。
なんか相当間が空いてるので、忘れてるのがあったらごめんなさい。
>コンスタンティン様
何か風邪はとっくに治ってるんですが、咳が長引いてましたよ。
どうもアレルギーらしいことが判明。gkbr
お互い身体には気をつけましょうねw
>わっふるな方@2008/12/07
えーと、どの記事に対してでしょうか?
何かごめんなさい。このブログには表向きそういうのは置いてないはずですw
アレ? wwww
>911様
沢山の拍手をありがとうございました。
おかげでなんとか生きてます。え? 大袈裟? www
例によってSSは収納してますんで
↓からどーぞ。
季節の変わり目には体調を崩しやすいってのはよく言われることだと思うが、俺の場合に限って言えば、いくら自分で体調管理をしたところで、外的要因に振り回されて結局無駄に終わることの方が多いのはもう諦めるべきなのであろうか?
何かで聞いたことなのだが、ストレスが免疫力を低下させるのだという。
要するにストレスフリーな生活をしていればちょっとしたことで風邪なんかをひいたりする危険もないらしいのだ。ああ、実に憧れるね、そんな生活が出来る環境にいる人のことが羨ましい限りだぜ。
まあ、俺はというと、本日もSOS団の活動とやらで、例によって団長様に散々扱き使われたり怒鳴り散らされたりと、擦り切れてしまわないほうがおかしいというぐらいの有様だったしな。正直、心身共に疲れ切っていたことは間違いない。
とにかく、久々に早めの時間にベッドに転がり込んだ俺の安眠の妨害となったのは、ご無体な携帯電話の着信メロディなのであった。
全く、こんな時間に電話だなんてどうなってやがる?
ああ――ただ一人そういうことをしそうな人物に思い切り心当たりがあるものの、残念ながら現在聞こえてくる能天気なサウンドは俺がハルヒからの着信に設定しているものとは異なる……じゃあ誰なんだ?
『よおキョン! 俺、俺』
「何だ谷口か。俺はとっくに寝てたんだがな。もう切るぞ、お休み」
『おいこら、酷ぇな! ……待って、切らないで、お願い』
「……全く、何時だと思ってやがる? で、一体どうしたんだ?」
『いやぁ、前にもちょっと言ってたんだが、例のコンビニのキャンペーン応募の〆切がもうすぐだろ? で、慌てて点数集めようとこの辺の店舗ハシゴしててさ』
何かと思えばそんなことかよ。
『あともうちょいなんだが、そういえばキョン、お前この間余ってるポイントのシール、俺に分けてくれるって言ってたよな。それで、悪いけど明日にでも……』
と、なにやら耳障りなノイズが受話器越しに伝わってきた。
「おい、谷口? どうしたんだ、聞こえないぞ」
『WAWAWA! ビックリしたぜ。いや、たった今目の前に女の子が飛び降りてきて……って、アレ? あの女子、制服も北高だし、何か見覚えが……ぐはぁっ!』
ツー、ツー、ツー……。
何だ、切れちまったのか? そんなに電波状況がよくなかったのかね。やれやれ。
ふわぁ~……そういや、自分では応募する気がないのに何故か捨てずにとっておいたんだったっけ、あのシール。明日持って行ってやるか。まあ、朝起きて覚えてたらな……。
翌朝、珍しいことに谷口の依頼を忘れることなく、ちゃんと件のポイントシールを持ってきた俺なのであった。
だが、それに反して、朝の五組の教室内、何故か谷口の姿が見当たらないではないか。
何だ、遅刻か? それとも、風邪でもひいて休んじまったのか?
「ちょっと、朝っぱらからなにブツブツ言ってるのよキョン。 傍から見てたらすっごくマヌケに見えるから止した方がいいわよ」
大きなお世話だ。
「ってハルヒ、その箱は……また例の figma とやらを持ってきちまったのか。 やれやれ、今度は一体誰なんだ?」
「うーん、それが、あの『朝倉』なのよね。何で今頃この娘が出るのかも解んないんだけど、何故かあたしも買っちゃったのよね。ねえキョン、どうしてかしら?」
って、そんなこと、俺に訊かれても困るんだが。
ちょうどそこで、岡部教師が教室に姿を現した……一人の女子生徒を伴って。
別に驚いたりしなかった、というと嘘になるであろう。事実、あまりにも意外なその人物の登場に、俺はしばらく呼吸すらすることも忘れて、ただ呆然と目の前を見ることしか出来なかったんだからな。
ああ、みなさんもご想像の通りだ。
岡部の隣には、どこか照れくさそうに微笑を浮かべて、あの『朝倉涼子』が立っていたのだから。
「あー、静かに。えーと、一年のときに、お父さんのお仕事の都合でカナダに転校した朝倉くんだ――まあ、ほとんどのものは知ってるとは思うが」
実際、一年のときとほぼ変わらない五組の面子にハルヒが嘆いていたのか満足していたのかも解らない反応を見せたのもついこの前のような気もすれば、随分と昔のことのような気もするな。
「で、この度の帰国で、しばらくこちらに滞在することになったので、こうして挨拶がてらに登校してくれたというわけだ。みんな、まあよろしく頼む」
岡部の言葉と同時に教室内のどこからともなく拍手が鳴り始め、ぺこりと一礼する朝倉であった。
その直後、面を上げたその視線が俺とハルヒの方に向けられていたように思えたのだが、うーむ……気になるじゃないか。
「あー、座席だが……そういえば今日は谷口が休みだったな。申し訳ないが、一時的なことだし、その席でも使ってもらっていいか?」
「はい」
朝倉が谷口の席に座ると同時に、俺の襟首が真後ろに引っ張られる。痛ぇな、ムチ打ちにでもなったらどうしてくれるんだ?
「そんなことどうでもいいわよ。それよりキョン、これってやっぱり、すっごい偶然よね! 朝倉の figma を持ってきたその日に本人が帰ってくるなんて、でき過ぎじゃないの」
うーん、偶然にしては確かにでき過ぎな気もするな。
「あんたもそう思うでしょ? ふっふーん……これは、是非とも朝倉を歓迎しなくっちゃね」
「あれ、ハルヒ? お前って朝倉とそんなに仲が良いって程じゃなかったろ?」
「そんなこと一々気にしないの! それに、転校先のカナダのことも気になるじゃないの。色々訊いておかなくちゃね」
こうなったらハルヒは行動が早い。
授業明けの休み時間、ハルヒは朝倉の席――この際谷口のことはまあ置いておこう――に向かうと、女子連中の話の輪にしっかりと割り込んで、早々に場を仕切っている様子である。
しかし、一年の五月頭ぐらいには、ハルヒはその朝倉からクラスで孤立しかねないとまで心配されていたわけで、それを思うと、何故か俺の方が妙に複雑な思いでいっぱいになるのはどういうことなんだかな。
まあ、当人たちはそんな俺の感慨などものともせずにそれなりに盛り上がっているようなのだ。まあ、どうでもいいか。
って、全然よくねーって!
そもそも、朝倉はカナダに転校なんかしていない。あれは長門が情報操作とやらで『そのように』してしまっただけのことなのだ。
つーか、何故消えちまったはずの朝倉が今この場に存在しているんだ?
うーむ、解らん。
しかし、よくパニックを起こさずに済んでいるもんだな、俺って。
ああそうか、以前はハルヒがいなくてその代わりに朝倉が、ってことだったが、今回はちゃんとハルヒはいるから一安心ってことなんだろうな。って、どうしてハルヒがいるだけで安心してるんだ俺? ますますわけが解らんぞ。
まあ、こんなときには例によって長門に確認してみるに限るな。それに尽きる。
更に次の休み時間、俺が六組に向かうと、丁度出入り口から長門がその姿を現したところに出くわした。
「おい長門……って、あれ? お前、眼鏡か?」
「……えっ?」
長門はメガネの蔓に手をやると、僅かに後退りした。
「どうして……あなたが、ここに?」
「お、おい長門、どうしちまったんだ一体?」
俺が長門の肩に手を掛けたと同時に、長門は壁を背にした状態で俺から顔を背けるように項垂れた。
「やめて……」
へっ?
「…………」
って、このリアクションには覚えがある。
「わ、悪い。その、すまなかった」
俺は手を離して、一歩距離を置いた。
間違いない。この長門は、『あの長門』だ。しかし、まさか……朝倉の出現と何か関連があるのには違いないであろうが、一体どうなってるんだ、これ?
「いや、ちょっと確認したいことがあっただけで、驚かせてしまってすまん」
「……ごめんなさい」
どこか怯えたような目でそう呟く長門。ダメだ、この調子では何を訊いても答えてはくれないだろう。
しょうがない、どのみち休み時間は短いし、あとは放課後に落ち着いてもらって話するか。
「あー、えっと、その……」
「なに?」
「長門……放課後、文芸部室にいるんだろ?」
僅かな頷き。
「なに、ちょっと訊きたいことがあるんで、だから……放課後に、いいか?」
「あっ……」
って、何故そこで頬を赤らめるのだろう? 全くわけが解らん。
俺はこれ以上状況がややこしくなる前にその場を離脱することに決め込んだ。
ちなみにハルヒはというと、俺がいない間に朝倉を席に着かせて、例の figma の箱を片手に、何やら話し込んでいたらしい。
朝倉自身も、特に戸惑う様子も見せずにハルヒに付き合って談笑しているみたいである。
だが朝倉は、以前とは全然ハルヒの反応が違っているということに面食らったりはしないものなのだろうかね?
おそらくハルヒに直に接触したのって、『あの日』の朝が最後のはずだしな。そのときの対応を考えると、かなり露骨に違和感を覚えると思うのは俺だけなんだろうか?
えっ? 訊きたいことがあるなら朝倉本人に確認すればいいじゃないかって?
まあそれはそうなのだが……気分的に、ちょっとな。その辺は察していただけると、俺としてもありがたい。
さて、放課後になったら、長門から色々聞き出さないとイカンのだが、果たして大丈夫か?
結論から言おう。まあバレバレだとは思うが、全然大丈夫なんかじゃなかった。
つーか、なんじゃこりゃ!?
放課後の文芸部室、呆然と立ち尽くす俺に容赦なく声が掛けられる。
「こらキョン、あんたなにボサーっとしてんのよ? 早くこっち来なさいよ」
いやいや、ちょい待て。これは一体何の真似だ?
「なにって、パーティよ、おでんパーティ!」
いや、おでんは見れば解る。部室のど真ん中の長机の上に設置されたカセットコンロには、これまたいつの間に調達したのだ、という具合に、完璧なおでん鍋が鎮座ましましていた。
で、おでんと言えば……当然朝倉なのであるが(ってそうだったのか?)、
「あら、お邪魔だったかしら?」
澄ました顔で平然と微笑んでいる朝倉に、俺もつい笑顔で反応してしまいそうになる。
いや、邪魔とかそういうんじゃなくて、一体どういう成り行きでこうなっているんだろうね? はははは……。
「決まってるじゃないの、これはあくまでも『朝倉さん』の歓迎パーティなんだからねっ!」
「ということで、わたしは涼宮さんに誘われた、ってわけ」
あ、ああ、ハルヒの誘いってことか。なるほど、そいつは気が付かなかったな……って、おい古泉。
「はい、なんでしょうか?」
お前は何故そんなところに平然と座って、練りからしのチューブを弄んでいるんだよ? どうなってやがるんだ、これは?
「さて、僕は涼宮さんに依頼されてこちらの食材などの用意を整えただけですが……あなたは何もご存知ありませんでしたか?」
あー、真面目に訊いた俺が間違ってたかも知れん。つーか、突然おでんパーティーを準備するように言い渡されて、それにキッチリ対応できているあたり、機関とやらも中々侮れないね、こりゃ。
「はい、キョンくんも、お茶、どうぞ」
ああ、朝比奈さん、わざわざご丁寧にありがとうございます。
可憐なメイド服の先輩は、いつものコンロがおでん鍋に使用されているために、その代わりに電気ポットで淹れたらしいお茶を給仕していた。
「あの、ちゃんと淹れられてるかどうか、あまり自信ないんですけど、どうですかぁ?」
いえいえ、朝比奈さんのお茶に文句をつけるような輩はこの世に存在するはずがありませんよ。
まあ正直、俺程度の舌の持ち主なら味の違いなんて解りっこないのだが、まあそこは朝比奈さんなりのこだわりと言うか矜持のようなものがあるのだろうな。
で、問題の長門なのだが……うーむ。
「…………」
肝心の長門は、ハルヒと朝倉に挟まれた位置に座り、如何にも恥ずかしそうに肩を窄めて口篭っているばかりなのであった。
いや、長門が普段の長門であったとしても、例によって無言の行めいた沈黙を貫いていることには変わりないのかも知れないが。
やれやれ、この状態では長門に何か訊こうにも無理ってもんじゃないか。
仕方ない。ここは俺も、ご相伴にあずかるとしますかね、と割り箸と器を手に、おでん鍋に戦いを挑むことにした。
「ほら有希! どうしたのよ、遠慮しないでいつもみたいに食べなさいよ」
ハルヒはいつもの健啖家な長門のイメージと異なる現状に対し、少々違和感を抱いているのだろうか、どこか心配するような調子で声を掛けている。
「はい、長門さん。昆布食べるでしょ?」
朝倉は自分の取り分けた具をひたすら長門に勧めている。
それに対抗したものなのだろうか、ハルヒまでが、
「有希、大根は?」
と、自分は全然食べずに長門のリクエストに応えるべく箸を動かしている。
「……あ、あの」
当然だが、長門は戸惑ってばかり……って、そこで俺の方に助けを求めるような視線を寄越されても……ええい、仕方ないだろ。
「ほれ、これでいいか?」
俺は黙って餅巾着を長門に取ってやった。
「ちょっとキョン、あんた、なに勝手なことしてんのよ?」
当然といった感じで抗議の声を上げるハルヒだったが。
「あ……ありがとう」
「あら……長門さんは餅巾着が好きだったわけ?」
朝倉の問いに、無言で頷く長門。
と、同時に反射的に俺は先手を打つ。まあ、何となくそろそろハルヒの口がアヒル状に変わるような気がしたからなのだが。
「ほらハルヒ、お前は何が欲しいんだ? さっきから長門に取ってやってばかりで、肝心のお前はほとんど何も喰ってないんじゃないか?」
「う、うるさい! あんたなんかに取ってもらわなくったって――って、熱っ!」
慌てたのだろうか、ハルヒが自分の器に取り損ねた具が跳ね、それを持っていた手の甲にだし汁がまともに掛かってしまった。
「…………」
突然のことに、隣の長門は絶句したまま。
「あら、大丈夫?」
「ふえぇ! 涼宮さん、大丈夫ですかぁ?」
「念のため、水で冷やされては如何ですか」
朝倉も朝比奈さんも古泉も、一様にハルヒに気遣いの声を掛けた。
だが、当のハルヒは、
「うん、平気、平気だって」
と、明らかに平気に見えないのに強がっていやがるぞコンチクショウ。
「こらハルヒ! ちょっと来い」
「って、なによキョン、いきなり」
ハルヒの手を引いて部室を飛び出した俺はすぐ下の水飲み場へと急いだ。ハルヒも、最初は面食らったような反応だったものの、何故か大人しく俺の後に続いた。一体どういう風の吹き回しなんだろうね?
さて、どういうわけだか知らんが、ハルヒのヤケド部分を水で冷やしている間中ずっと、俺もアイツも沈黙を決め込んでいたりしたのであった。
こういうときは「痛くないか?」とか、何かこう、気遣いの声を掛けるべきなのだろうが、俯きながらも、どこか俺から目を逸らしがちなハルヒのことがついつい気になってしまった俺は、結局何もいえず仕舞いであったのだ。ああ、情けねえ。
しかし、それにしても――素材はいいんだし、こんな感じでお淑やかにしておいてくれたら、もう少しは可愛らしさってものを感じられ……って、一体俺は何を血迷っているんだろう?
とまあ、俺が酔狂な感慨を抱いてしまうようなハルヒの様子は、部室の近くまで戻ってきたところでどこかにすっ飛んで行っちまった。
「……ああっ、アイツは!」
丁度ハルヒの不在を狙い撃ちしたかのようなタイミングで、部室の入り口では生徒会長と喜緑さんを前に、俯いてひたすら小さくなっている長門の姿が!
いかん! このままだとハルヒは、生徒会長にフライングボディプレスぐらい食らわしかねないんじゃないか?
「おいハルヒ、待て!」
「なによキョン、邪魔しないでよ。有希がピンチじゃないの!」
一触即発……と、そのとき――中から朝倉がその姿を見せた。
遠目に見ている俺たちには、二言三言であろうか、何やら言葉の遣り取りをしていた様子が窺えたのであるが、何を言っているのかまではよく聞こえない。
しかし、いつかどこかで見たような、朝倉のウインクしながら両手を合わせる仕草には、さしもの生徒会長も硬直してしまったようだ。
と、次の瞬間、背筋を伸ばして眼鏡を直した生徒会長は、喜緑さんと共にこちらに向かって歩いてきた。
直前、喜緑さんが会長の上履きの上からその足を思い切り踏みつけていたような気がしたが、多分俺の見間違いか気のせいだろう。うん、きっと何事もなかったんだろうな。
すれ違いざまに、
「あら、生徒会ってよっぽど暇なのかしら? 今度は何の用件で有希をいじめようとしてたわけ?」
との、チクリとハルヒの一声。
負けじと会長も、
「勘違いしないでくれたまえ。そもそも、部室棟内では火気厳禁だ。まあ、朝倉くんといったか……彼女の『現在、部室内での火気の使用は一切御座いません』との証言に免じて今回は何も見なかったことにしたまでだ」
と、やり返す。
「へえ、あたしたちに貸しでも作ったつもりなのかしら?」
「この際ハッキリ言っておこう。私はSOS団などという存在はそもそも認めていないし、そのような団体相手に貸し借りなどという関係はおろか、一切の交渉を行うつもりは毛頭ない! ……では、失礼する」
足早に去っていく生徒会長――俺たちに軽く会釈して、その後に喜緑さんが続く。
「ふんだ、なによエラそうに。ああ、なんかムシャクシャしてきたわ、もう! ……こらキョン、なにボケっとしてんのよ? 早くこっち来なさい」
ハルヒはプリプリと怒って部室内へと飛び込んでしまった。
……ふうっ、やれやれ。
どうやら気付かれなかったようだな……会長とハルヒが言葉を戦わせている間に、喜緑さんが俺にそっと耳打ちしたことを気取られなかったことに、俺は安堵の吐息を洩らしたのだった。
やがて――下校時刻。
古泉は例によってさっさと逃げちまったし、朝比奈さんは、迎えにいらした鶴屋さんと仲良くご帰宅だ。
ああ、仲良くといえば、長門とあの朝倉もなんだかんだで一緒に帰るとのことだったが……まさか、朝倉は、これからあのマンションに戻ってくるってことなのか?
「ああ、それならあたしもさっき教えてもらったんだけど、朝倉って、あしたにはもう帰国しちゃうらしいのよ。全く、もう少しぐらいゆっくりしていけばいいのに……って、考えてみたら、転校するときも急だったし、仕方ないのかもね」
言われてみれば何もかもが急な話だ。全く、さすがは急進派のインターフェースだけのことはあるな。
さて……今のこの場には、俺とハルヒの二人きりなわけなのだが。
「じゃあキョン、あたしたちも、その……」
「すまん、ハルヒ」
「えっ?」
「ちょっとこの後、野暮用があってな。もしなんだったら、お前だけで先に……」
と、そこで俺は言葉を止めざるを得なかった。
おいおい、何だよその表情は? まるで親から引き離されて鼻から悲しげな鳴き声を上げている仔犬みたいな目で俺を見られても困っちまうだろーが。
「……と思ったが――ハルヒ。悪いけど、校門のところでしばらく待っててくれないか?」
途端、哀れな仔犬から提灯にされたハリセンボンにクラスチェンジを遂げたハルヒは、
「んもう、早くしなさいよね! じゃあ……あたし、待ってるから」
と言って、やはりどことなく寂しげな背中で俺の前から去っていった。
待ってるから……か。
ゴメンな、ハルヒ。俺って本当に、お前に待たせてばかりじゃないか。
ところ変わって、ここは体育倉庫前。
俺が到着したときには既に、喜緑さんがその場に佇んでいた。
「すみません、遅くなりました」
「いいえ、お気になさらずとも結構です」
と言って、喜緑さんは倉庫の扉に手を掛けた。
音もなく引き戸がスライドし、中からゴロリと何かが転がりだしてきた。って、これは谷口の生首?
「ひいぃぃぃぃ!」
「あらあら、よくご覧になってください」
と、喜緑さんに促されてゆっくりと目を開くと、そこには薦巻き状態で頭だけ飛び出している谷口のマヌケな姿があった。
喜緑さんが何をしたのか俺にはよく見えなかったのだが、戒めを解かれた谷口の私服はいつの間にか制服に変化していたのであった。
ああ、情報操作とやらは、本当に何でもありなんだなということを改めて思い知らされた俺である。
「うーん……ここは、ってキョンじゃねーか!」
「やれやれ、目は覚めたか、谷口」
「そんなことより聞いてくれよキョン! 俺は今この目で見たんだ」
「ほう、見たって、一体何を?」
「何をって……何だっけ?」
「あのな、谷口。お前が知らんものを、俺が知ってると思うか?」
「ああ、悪ぃ、キョン。俺……寝ぼけてるみてーだ。もう帰るわ」
「そうした方がいい。お大事にな、谷口」
谷口は腐った魚のような目をしたまま、生ける死者のような歩みで俺たちの前から姿を消した。なんとなくだが、某ゲームに出てきたら、速攻で射殺されてミンチになっちまいそうな気もするのは何故だろう?
それに……どうも隣にいた喜緑さんには全く気付いていないらしい。まあ、話が妙にややこしくならないようにしてくれたんであろうね。
「さて、喜緑さん」
「何でしょうか?」
喜緑さんは平然としたままで、俺の前で静かに笑みを浮かべている。
「谷口は、朝倉が現れるところに鉢合わせちまった、ってことであってますか?」
「ええ」
「ところで、そもそも何で朝倉が俺たちの前に? それに、今日は長門もずっと様子がおかしかったし……教えていただけますよね?」
「うふふ……さすがにお断りするわけにはいかないようですね。実は昨晩、長門さんにはインターフェースとしてのメンテナンスが実施されていました」
メンテナンス?
「はい。処理は全て正常に行われ、消去可能なデータも全て削除されることになりました」
「消去可能なデータって、まさか……」
「ええ、彼女の内部に蓄積されたエラーです。でも、その削除実行の時点で、まだ実行すべきでない再起動シーケンスに突入してしまったのです」
再起動シーケンス、ってなんかヤバそうな感じがするんだが。
「わたしたちもあらゆる手を尽くして、長門さんの保全に努めました。そのため、一時的にですが、長門さんは機能のほとんどをロックされた状態で活動を再開することになってしまったのです」
「なるほど、それがあの……」
「はい……ふふふ」
「あ、あの、何か?」
「いえ、あなた方もわたしと同じことを、本日の長門さんに感じていらっしゃるみたいですから……」
優しく微笑む喜緑さんを見て、何故か俺は本日の部室での長門を挟んでのハルヒと朝倉の遣り取りを思い出してしまっていた。
「守ってあげたいじゃないですか。だから、わたしたちも『彼女』を――朝倉涼子の存在を一時的に復元させたのです。ただ、唯一想定外だったのは……」
「ああ、谷口のことですね」
「ええ、彼には申し訳ないことをしました」
「まあ、別にそれは放っておいていい気もしますが」
「あらあら、そうですか?」
ふと、喜緑さんはこちらに向き直って静かに訊ねてきた。
「ところで、昨日、あなたは涼宮さんに関してなにかお気付きのことはありませんでしたか?」
「と、仰いますと?」
「彼女が、なにか精神的に不安定になるようなことは?」
さて、昨日は……そうそう、また俺はハルヒのくだらない思いつきで大荷物を抱えて、部室からあちらこちらへと右往左往させられる羽目になり、あげく、階段ですっ転びそうになって、ダンボールの中身ぶちまけて、案の定、ハルヒはおカンムリで……、
ああ、そうだったのか!
「やはり、なにか?」
「ええ。ちょっと俺、あいつに嫌なことを思い出させちまったみたいです」
「なるほど。もしかしたら、今回の一件は、涼宮さんがその心のモヤモヤを解消するために引き起こされたことなのかも知れませんね」
やれやれ、全く、仕方がないヤツだな。
「いえ、どうか涼宮さんを責めないでいただけませんか」
「ああ、そうですね。アイツが意識的にこんなことを仕組んだなんて、さすがに俺も思ってませんから」
「ええ……ところで、その涼宮さんですが、もうかなりの時間、お待ちいただいているのではありませんか?」
げっ、しまった!
「喜緑さん、すみません。俺、もう行かないと」
「はい。お疲れ様でした」
「こら、アホキョン! あんた一体いつまで待たせるつもりなのよ?」
校門のところで待っていてくれたハルヒは開口一番に俺に対してブーたれた。
「いや、スマンスマン」
「ほら、さっさと帰りましょう!」
相変わらず、ハルヒは一見怒っているのか笑っているのか解らない表情のままで足早に通学路の坂を歩み始めた。
そういえばいつだったか、俺はハルヒに『幼馴染みが照れ隠しで怒っている感じで頼む』とかわけの解らんリクエストをしたことがあったな。そうか、あの日は……、
「ところでキョン?」
うおぁ! と、ハルヒの呼びかけについ驚いてしまう俺だった。
「な、何だ?」
「さっき、アホの谷口が、フラフラと帰っていくのを見たんだけど、アイツって、今日休みだったんじゃなかったかしら?」
「さ、さあな」
「…………」
「…………」
うーむ、なんというか、その、沈黙が気まずい。
「…………」
「…………」
そういえば、先程の記憶の思い返しついでというわけでもないが、例の日は、俺はハルヒに連れられて、朝倉のマンションを訪問させられたんだったっけ。
「…………」
「…………」
いかんな。
さすがに、あのときみたいにダンマリを決め込むつもりなんて更々ない俺だったのだが、正直、こういった場面で何を話せばいいんだ? 全く解らん。
「…………」
だが、以外にも先に沈黙を破ったのはハルヒの方だったのだ。
「ねえキョン。そういえば今日、有希って眼鏡掛けてたわよね。普段はコンタクトだったのかしら? 気のせいか、あの子いつもより大人しいような気がしたし……うん、でも、たまには眼鏡っ娘の有希ってのもいいもんだわね」
ふうっ……やれやれ。なんか都合のいいように解釈してくれたみたいで助かったぜ。
先程喜緑さんに教えてもらった長門の事情をいつ何時突っ込まれるかと思っていた俺は思わず安堵した。
しかし、そういえばハルヒが長門の眼鏡について指摘したのもあの日のことだったっけ。今日は随分と、朝倉に縁のある一日じゃないか。
「……ところで、朝倉の figma のことなんだけど」
って、ハルヒの口から急に『朝倉』の名が飛び出したために、俺は心臓が飛び出しそうになるのを必死で堪えた。つーか、さっきからずっとハルヒにはビックリさせられてばかりのような気もするな。
「キョン……聞いてる?」
「えっ? ああ、朝倉の figma がどうしたって?」
「アホの谷口のドタマはどうでもいいとして、何でナイフなんてものが付属してたのかしら?」
ナイフ……嫌なことを思い出させてくれるじゃないか。
「そんなこと、俺には解りっこないだろーが」
「ま、そうかもね……でもね、キョン。人はみんな……心の中に、ナイフの一本ぐらいは隠し持っているものなのよ」
そう言うが早いか、ハルヒは俺の背後に回ると一分の無駄もない動きで、俺の身体を拘束して左手に構えたナイフ――いや、多分シャーペンか何かだろうが――を喉元に突きつけてきた。
「!」
とあるゲーム中に出てきた、近接戦闘のことが一瞬頭に浮かんだが、同時に何故か新川さんの声まで聞こえてきたような気がするのは何故だろう?
「ハルヒ?」
「…………」
「お、おいハルヒ? なんつーかその……」
「苦しい? 息が出来なくて」
いや、窒息するとか、そういうことではないんだが、妙に密着しちまっているせいで、背中に押し当てられた柔らかな感触がなんとも……って一体俺は何を考えているんだ?
「あたしは……苦しかったのかも。ううん、辛かったのかしら」
はあっ? 一体何のことを言って……違うな……、
「もうイヤ!」
「…………」
「お願いキョン……勝手にいなくなったりしちゃ……ダメなんだから」
ああそうだとも、つい先程思い至っていた通りじゃないか。
ハルヒはやはり、俺が入院していたことになっている例の一件を思い出してしまったのだ。改めて俺はそのことを思い知らされた気がする。
でもなあハルヒ、あの時は、むしろ俺の前からどこかに行っちまったのはお前の方だったわけで……いや、そもそもそんな問題じゃないんだよな。
「ハルヒ……とにかく離してくれないか?」
「やだ!」
「ハルヒ!」
「…………」
僅かに腕の力が緩む。俺は拘束から逃れると、ハルヒの方に向き直った。
おいおい、全く。そんな不安そうな顔するんじゃねーよ!
「えっ? キョ……」
俺はハルヒの頭を捕まえて自分の胸元に押し当てていた。
何でそんなことをしちまったのか? いや、理由なんかもうどうでもいい――でもこれだけはハッキリ解る。
「なあ……ハルヒ」
「な、なによ?」
「確かこうだったっけ――『自分がこの地球でどれだけちっぽけな存在なのか』――あの日、お前は言ってたよな」
「キョン……覚えてたの?」
「まあ確かに、たかが一人の人間の存在なんてそんなもんかもしれない。でもな……俺の心の中では、ハルヒ、お前の存在はもうどうしようもないぐらいにでっかくなっちまったんだ……この意味、解るか?」
「わ、解んないわよ……」
「実は……俺自身イマイチよく解らん」
「はぁ? あんた、あたしのこと、バカにしてるわけ?」
「まあ聞け。だから、その意味がお互いに解るようになるまでは……俺はお前の傍にいたい」
「キョン……」
不意に、背中に回された腕に込められた力が増したのを知る。それに釣られて俺自身もハルヒとの距離を限りなくゼロに近づけようとしてしまう。

ああ……全く、通学路のど真ん中で何をやっているんだろうな、俺たちって。
「知らないわよ、バカ!」
そう口では強がって見せながらも、より一層密着の度合いを高めてくるハルヒに対し、ただ俺はそのままの体勢を取り続けるしかなす術がなかったのだ。
ああ、ヘタレで悪かったな、チクチョウめ!
翌日、担任岡部教諭からクラスのみんなに朝倉の帰国が伝えられた。ちなみに、どうでもいいかも知れんが、谷口も無事登校していた……のだが、例のコンビニのキャンペーン応募の〆切には間に合わなかったらしい。
その日の放課後の文芸部室、俺は長門本人からコッソリと昨日の喜緑さんから聞かされていなかった詳細を教えてもらっていた。まあ、ほとんど理解できなかったのは言うまでもないがな。
「……伝言」
うん、何だ一体? ……あ、もしかして朝倉から俺にってことか?
「そう。ただ正確には、あなただけでなく、涼宮ハルヒへのメッセージも含まれる」
で、そいつは一体どんなメッセージなんだ?
無言で長門は俺に一枚の紙片……どこか見覚えのあるノートの切れ端を差し出してきた。
『やっぱり涼宮さんのことをあなたにお願いしたのは正解だったみたいね。たまに情報爆発を起こしてるみたいだけど、一応は安心かしら。それから涼宮さんへ――いつまでもお二人で仲良くね。でも所構わず抱き合ったりしちゃうのはどうなのかしら?』
って、まさか朝倉、昨日の俺とハルヒをずっと観察してたんじゃないだろうな?
直後、ばーん! と、ドアが弾け飛ばんばかりに開いた。
「いやぁ、遅れてごっめーん! って、ちょっとキョン。なにマヌケ面晒してんのよ?」
い、いやハルヒ。べ、別に何でもないぞー。
「むー、怪しいわね……こらあんた、この期に及んであたしに隠し事? 白状しなさい!」
こらこら、首絞まるって! つーか、みんなが見てる前で、お前俺にくっつき過ぎだってば!
「あ~ら、昨日あたしに『傍にいたい』って言ってたのはどこの誰だったかしら?」
お、おいハルヒ!
「ほほう、これは聞き捨てなりませんね」
「ふえぇ、涼宮さんもキョンくんも、お二人とも大胆なんです!」
「熱烈な求愛行為と認識。一言で感想を述べるとすれば……バカップル乙」
ってヤバイって。そこの三人も見てるだけじゃなくて、お助け……、
はい。すみませんw
しかし、現時点ではハルヒ関連の figma の新規キャラ発表はまだないようなので
このシリーズ(?)もしばらくお休みなのかもしれませんね。
●<マッガーレ↓

名前の元ネタがすでに何か解らなくなってますが気にしないでくださいw
久々の更新待ってました!
いやいや、もう脱帽ですな。GJすぐるwww
何かご謙遜されているようですが充分面白いし甘甘でしかもくどくないという、どうしたらこういうの書けるのか今度ご教授くださいww
2828しながら読ませてもらいました。
傍にいたい理由がわかるまでって、傍にいたいって時点で答え出てるだろ、キョンwww
そこに理由を求めてしまうのがキョンなのかもしれませんが。
イラストのハルヒが可愛すぎて顔が戻らん、どうしてくれようww
figmaシリーズもいったんおしまいですね。
また新たに出たら楽しみにしております。
>911様
いつもコメントありがとうございます。
えーと、別にお名前はスルーしてるわけではありません、と
一応書いておくことにしますw
>>久々
あまりに久々過ぎてスレ投下するとき手が震えてたとかねww
>>今度ご教授~
何を仰いますかwwww弟子にして欲しいのはこちらでっせ、大師匠!!
>>そこに理由を求めてしまう
それがキョンクオリティwww
って正直逃げましたサーセンw
>>ハルヒが可愛すぎ
キョンが別人すぐる…… orz
>>いったんおしまい
フロリボではシリーズ書ける気がしないのは何故だろうw
どーも、お晩です。
まずは久しぶりのSSお疲れ様です。
ストーリーも挿絵もグッドです。ニヤニヤが止まりません。仕事場のPCじゃなくて良かった・・・。GJです。
>英太郎様
コメントありがとうございます。
>>久しぶり
サーセンw
なんか書けない病をずっと患ってます……。 orz
しかし、また無理矢理にでも書かないとってな状況がw
>>仕事場のPC
さすがに自分は職場のPCでは書いてないですね。
というわけで持ち込んだ私物のノートPCで<仕事しろ! www
いやぁ相変わらず上手い!
なんだかんだ言ってキャラ間の絶妙な間合いがグッドです。
自信を持ってください!w
>猪様
コメントありがとうございます。
というか、某所ではネタ出しにお付き合いくださりありがとうございましたw
>>間合い
つーか逃げちゃいましたサーセンwww
>>自信
なかなかそうは上手くいかないので困りものですね orz