続いて二連投の二つ目です。
先日の放課後、何の前触れもなくハルヒが、
「ねえ、キョン。冬といえば、やっぱ鍋よね。というわけで、今度の土曜日には市内探索の後で有希の家で緊急鍋パーティが開催される事に決定しました。みんな、いいわねっ!」
とか言い出したため、本日、即ち土曜日の晩にSOS団の全員が長門のマンションに集結してこうして鍋の準備をしている、というわけである。
ちなみに今回はチゲ鍋だ。一応長門のリクエスト、ということになっているが、
「有希、あなたは何の鍋を食べたい? 場所を提供してもらうんだからあなたの好みを聞くわよ」
とのハルヒの問いに、例によって『カレー』とか答えそうだった、というか『カ』の字まで口に出掛かっていたので、俺の入れ知恵で『韓国料理のチゲ鍋』ということにしてもらったのだ。
まあ、辛いモノ仲間ってことで何とか我慢してくれ、長門。
「……」
なんだか少々残念そうな様子の長門だった。そんなにカレー食いたかったのか。解った、今度みんなで一緒に食いに行こうな。
「……二人がいい」
ん、何か言ったか、長門?
「なんでも」
朝比奈さんは何処となくそわそわしているな、と思ったら
「あ、あのぅ、涼宮さん。わたし、その、あんまり辛いのは、に、苦手なんですけど……」
と告げた。ハルヒは
「へえ、みくるちゃんって辛いのがダメだったんだ。――そうだ、家に韓国土産に貰った唐辛子が結構一杯あったのよね。それを使うことにしましょう。大丈夫、みくるちゃんでも食べられるようなマイルドな辛さになると思うわよ」
と、笑って答えたのだが、それでも何だか不安気というか、憂鬱そうに溜息を吐く朝比奈さんであった。なあハルヒ。本当に大丈夫なのか?
「なによキョン。あたしが信用できないってわけ? あんたに罰ゲームで激辛フードを食べさせるんならともかく、あたしはみくるちゃんにはそんなイジワルはしないわよ」
いや、別にそういうのを疑ったりってわけじゃないんだがな。本当にそれほど辛くないのか、ってのが心配なだけだ。
「まあ、ここは涼宮さんにお任せしてみては如何ですか。きっと勝算は十分お有りなのだと僕は思います」
古泉はいつもの笑顔で全肯定だった。どうでもいいが、顔が近いっていつも言ってるだろ。離れろ。
「失礼。それに韓国産の唐辛子は国産のものよりも辛くないという話を聞いたことがあります。きっと大丈夫ですよ」
まあ、今更別の鍋に変えるとか言う代案ぐらいしか思いつかない俺に比べれば、前向きというか建設的な手段なんだろうな、ハルヒのアイディアは。
というわけで、ハルヒは今、俺の目の前で唐辛子の鞘をほぐして種の部分を選り分けて捨てるという地味というか退屈なだけの作業を、こいつにしては飽きもせずにひたすら繰り返していたのだ。
「キョン知ってる? 唐辛子って、種の周りの部分が特に辛いの。だから種の部分を使わないようにすればあんまり辛過ぎなくなる、ってわけなのよ」
そいつは初耳だったな。しかしなんだか面倒くさそうな作業じゃないか。いっそのこと、細かく切ってから鞘の部分だけ集めて使う、とかの方が手っ取り早くないか?
「ダメよ。唐辛子は細かく刻んでも辛味が増すの。こうやって鞘の部分を破るのを必要最小限にしてるのはちゃんと理由があるんだからね」
なるほどね。
俺はそれ以上口出しせずにハルヒの作業を隣でじっと眺めていた。
「……ちょっとキョン。なにニヤニヤこっちを見てるのよ。気味が悪いから止しなさい」
ああすまん。何ていうか少々感心していたんだ、ハルヒのことをな。
「もう、今更なによ?」
そう言って少し俯き加減になるハルヒだった。気のせいかその頬が微妙に赤くなっているようだったが、唐辛子の辛味に当てられたんだろうかね。
「何って、ハルヒはいつも昼は学食みたいだし、弁当とか作ってる様子もないから、実は料理が苦手なんじゃないかってちょっと心配してたんだ」
俺のセリフに露骨にムッとしたようなハルヒだった。文句が飛び出す前に慌てて俺は続ける。
「ああ、解ってるって。さっきみたいな知識も十分豊富だし手先も相当器用だ。ハルヒが自分の弁当を作ってこないのは出来ないんじゃなくて作ることに意義を見出せないからなんだろ?」
「まあ、そんなところね」
「だとすると誰かのためになら料理はするってことだよな。全く、ハルヒの将来の旦那さんって人が羨ましい限りだな」
「…………バカ」
ハルヒはそう呟いたまま口篭ってしまった。
なんだ、俺としては褒めてるつもりだったんだけど、何かヘソを曲げるようなことをいってしまったのだろうかね。
台所では先に朝比奈さんと長門が分担して具材の準備を進めていた。ちなみにレシピは長門がバッチリ調べていたらしい。
魚介類を炒める音がする。早速ハルヒのほぐした唐辛子を二本ぐらい使うようである。ごま油とニンニクの香りが香ばしい。
ところでさっきから古泉の姿が消失しているみたいなんだが。
「ああ、古泉くんなら卓上コンロを持ってきてくれるんだって。全く、副団長の古泉くんを差し置いてキョンがサボってるなんていい度胸じゃない」
しかし台所も狭いし俺がいても邪魔なだけだろ。かといって他に何かすることもないじゃないか。
「仕方がないわね。……そうだわ。キョン、あんたを一日鍋奉行に任命するわ。ああ大したことじゃないわ。あたしたち四人のぶんの具を取り分けてくれるだけでいいから」
まさか、俺の分はみんなが食べ終わった残り物とか、暴走したAIに支配された未来を描いた映画のいかにも悪役顔の看守が言い出しそうなセリフみたいなこと言い出すんじゃないだろうな。
「当然よ――って言いたいけど、さすがにそれは可哀想だから、あんたも普通に食べても構わないわよ。ただ、みんなのリクエストには最優先で対応すること。いいわね!」
ハイハイ、団長様のありがたきお心遣いに感謝痛み入りますよ、っと、口では言いながらも、何か裏がありそうな気がして動揺を隠せないでいる俺なのであった。
古泉が戻ってくるころには鍋の準備もすっかり整っていた。
それまで俺は台所から聞こえてくる三人娘の笑い声(実際に聞こえてくるのは二人分である事は言うまでもない)を耳にしながら、一人で炬燵に入って呆けていたのであった。
「おや、すっかり準備は整っているようですね。こちらも急いでセッティングした方が良さそうです」
古泉が持ち寄った卓上コンロを炬燵の中央に配置し点火確認を行う。
本当は汚れないように天板の上に古新聞か広告のチラシ類を引いておきたいところだが、長門に聞いたところ
「ない」
とアッサリ一言で返されてしまった。
まあ、長門には新聞なんか必要ないということなのか、あるいは読んだものは即座に処分してしまう、のどちらかなのであろう、きっと。
というわけでチゲ鍋パーティの開始である。
一日鍋奉行の俺の任務は、追加の具材投入と煮えている具の取り分けだ。
こらハルヒ。追加の豚肉はまだ火が完全に通ってないから、他のもので我慢しろ。
「もう、仕方ないわね。じゃあ海老にするわ。そうそう、キョンが殻剥いてちょうだいよね」
解った。だがちょっと待て。代わりにホタテで勘弁してくれ。
ほら古泉。白菜はこっちのが透明になってきているから食べ頃だと思うぞ。
「どうも、僕のためにわざわざご丁寧にありがとうございます」
だから、一々しゃべるときに顔近づけるなっての。
はい朝比奈さん。ご所望の豆腐ですよ。どうですか、辛くないですか?
「あ、キョンくん、ありがとう。ええ――これぐらいの辛さならわたしでもなんとか平気みたい。お豆腐も熱くてお口を火傷しちゃいそうだけど、とってもおいしいです」
そう言ってハフハフと豆腐を口にする朝比奈さんを見ているだけで俺の心は和んだ。
しかし、さっきから豆腐しかお召し上がりでないような気がするんだが。
「……大根」
ほらよ。
「……イカ」
よっと。
「……キムチ」
ほいさっと。
「……カレー」
はい、カレー、カレー……って、おい!
「……間違えた」
やれやれ、わざとやってるんじゃないだろうな、長門。しかし食べるペースは相変わらずだな。
今のところ、俺に対する取り分けリクエストは、長門が四、ハルヒが三、古泉が二で朝比奈さんが一という割合だ。
って、今気付いたが俺はまだ全然といっていいほど食ってねえ。普通に食べても構わないっても結局こうなるんじゃ実際意味ないよな。全く、何の陰謀なんだよこれは。
でもまあいいか。ハルヒは案外おとなしく俺の取った分をパクついてるし、朝比奈さんがうっかり唐辛子を鞘ごと口に入れてしまう、なんてことも俺が気を付けていれば防げそうだからな。
「ねえキョン。ちょっと出汁が煮詰まってきちゃったんじゃないかしら。お湯を足しなさいよ」
ハルヒに言われるままに俺は台所のヤカンを取ってくる。
どれどれ、あんまり一度に入れ過ぎたら薄まってしまうからな。
と、俺がチビチビとお湯を注いでいたのがハルヒには憤慨モノだったらしく、
「もう、キョンったら。なにチマチマやってんのよ。そんなの目分量で一気に――」
って、おい。手を伸ばすな。危な――
「きゃっ、熱っ!」
なんということだ。ハルヒの手をかわそうとした俺だったが、そのせいでヤカンからのお湯がハルヒの袖口に跳ねてしまったではないか。
「おい、ハルヒ、……ハルヒ! 大丈夫か?」
ハルヒは手首を押さえて顔をしかめている。袖の染みを見た感じではかなり広範囲にお湯を浴びてしまったみたいだ。
「なあ、長門。ちょっと洗面台借りるぞ。――ほら、ハルヒ。ちょっとこっち来い」
「な、ちょ、ちょっと、キョン?」
ハルヒの腕を掴んで無理矢理洗面台までつれてくると。俺は勢い良く水を出してハルヒの袖の染み部分ごと腕を突っ込ませた。
「冷っ! ……ねえ、キョン。なにも服の上から水掛けることないじゃない。腕捲りぐらいさせてくれてもいいでしょ?」
「ダメだ。火傷のときは無理に衣服を脱がせない方がいいみたいだからな」
「でも、ちょっと大袈裟過ぎない、これ?」
俺はつい声を荒げてしまった。
「バカ野郎! ――万一火傷の痕が残ったりしたらどうするんだ」
「…………キョン?」
「あ、いや、その、すまん、怒鳴ったりして。そもそも俺のせいで火傷したようなもんだし、俺が悪いよな」
「――責任、取ってくれるの?」
「はあ?」
「もし痕が残っちゃったら、キョンはあたしのこと、ずっと……面倒見てくれるのかしら?」
「ハルヒ。それどういう意味――」
次の瞬間、俺の足の甲をハルヒは思い切り踏みつけやがった。
「痛ってぇ! な、何しやがる」
「うるさい! ……あんた、あたしが今言ったこと……全部忘れなさい」
「全部って?」
「さっきあたしはキョンになにも言わなかった。――――いいわね?」
何だか知らんが顔を真っ赤にして俺を睨みつけるハルヒであった。
「解った。俺は何も聞いちゃいない。だから……責任取らなくてもいいんだよな」
「……バカ~!」
ハルヒのエルボーが俺のストマックに直撃する。
やれやれ、口は災いの元とは言いえて妙だな、本当に。
その後は特に何事もなく鍋パーティは終了と相成った。ちなみにハルヒの火傷は、あの後応急処置をしてくれた長門によれば『問題ない』、とのことだ。良かったな、ハルヒ。
帰り間際、濡らしてしまったセーターを結局脱いでしまっていたハルヒは
「くしゅん!」
と普段からは想像できないぐらい可愛らしげなクシャミを連発していた。
「なあハルヒ。お前、ひょっとして寒いのか?」
「セーター脱いでるからちょっとだけね。ああ、大丈夫よ。帰るときは上にコート羽織るから平気だってば」
でもな、お前の今日の格好は見てる俺の方が寒いぐらいだったんだがな。
「痩せ我慢するな。ほら、これでも中に着込んで帰れ」
俺は自分が今着ていたブルゾンを脱いでハルヒに手渡した。
「え、でも、キョンこそ寒くないの?」
「俺のコートはあんなでも結構防寒バッチリなんだ。ああ、そのまま月曜にでも持ってきてくれたらいいから」
ハルヒは受け取った俺のブルゾンをすぐに着るでもなく、抱きかかえて臭いを嗅いでいるようだった。まあクリーニングに出したばかりってわけでもないんだが、そんなに変な臭いがするか?
「…………キョンの匂いがするわ」
ポツリと呟くハルヒ。って、お前、何を当たり前のこと言ってやがる。
「な、なんでもないわ。……しょうがないわね。あんたがどうしても着てくれっていうんなら着てあげないこともないわよ」

ハルヒはそう言うと、俺のブルゾンと自分のコートを着込むと俺に背を向けて玄関へと歩いて行ってしまったのだった。
翌週の月曜日、ハルヒは妙に疲れたような顔で俺のブルゾンをクリーニングに出したから返すのが遅れると告げた。って、なんだ、そのまま返してくれても構わなかったんだがな。
「あんたが構わなくても――あたしが構うの」
よく解らんな。帰る途中で汚したとか? でも、上にコートを着てたらそんなことにはならんはずだが。
「それより火傷の具合はどうだ? まだ痛むのか?」
「別に、もう何ともないわよ」
それにしてはえらくやつれてるな。何かあったんだろうかね。
「ああん、もう、昨日は死ぬかと思ったわ。……結構腫れちゃって」
腫れる? なあ、ハルヒ。火傷はもう何ともないっていってたが、また別の箇所をどうにかしたのか?
「!」
ハルヒはその頬をピンク色に染めると俺から目を逸らしたままずっと黙っていた。何なんだこの反応は? 俺、ナニも変なこと言った覚えはないんだがな…………。
こっちはフィルターをキツ目にしてみましたが
お下品なオチで何もかも台無しwwサーセンwww
スレでも書いたとおり『webやぎの目』の
『死ぬかと思った2000年1月~2000年3月』で『唐辛子』を単語サーチすれば
何のことか解るかとw

「ああん、もう、昨日は死ぬかと思ったわ。……結構腫れちゃって」
腫れる? なあ、ハルヒ。火傷はもう何ともないっていってたが、また別の箇所をどうにかしたのか?
私も意味マジで分かりません・・・・・
>匿名希望じゃないが匿名様
初めまして。コメントありがとうございます。よろしくお願いいたします。
>>マジで分かりません
マジレスしちゃっていいのかな?
予めお下品なネタであることを断っておきますので自己責任でお願いします。
この検索結果をご参照くださればご理解いただけるのでは、と思います。
#ってこれ書いた時点で三位にこの記事が入ってたw
あ~・・・・理解理解
その頬をピンク色に染めると俺から目を逸らしたままずっと黙っていた
<理解 う~ん・・・・・ヤバイっすね・・・・